あひるのジマイマのおはなし【全文読み聞かせ・音声つき】
著作権が切れた原書から当サイトが新しく訳した「あひるのジマイマ」全文を、原書の絵と朗読音声つきで読み聞かせできます。たまごを自分であたためたいあひるの、はらはらするおはなしです。
公開日: 2026/7/10
「あひるのジマイマのおはなし」(ビアトリクス・ポター作、1908年)は、ピーターラビットと同じ作者による、あひるのおはなしです。作者の没後70年以上が経ち、原書の文章と絵の著作権が切れているパブリックドメイン作品なので、このページでは原書から当サイトが新しく訳した全文を、ポター自身が描いた原書の絵と朗読音声つきでお届けします。訳文は1〜3歳への読み聞かせを想定して、短い文のリズムにしています。
たまごを自分であたためたいジマイマが、あやしい「紳士」に出会う、ちょっとはらはらするおはなしです。シリーズの中ではスリルのある展開なので、怖がりなお子さんには昼間の時間帯が向いているかもしれません。じっと座って聞ける長さではない日もあるのが自然なので、途中でやめても大丈夫です。
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おはなし本編
めんどりが、あひるのひなをつれて歩いているのって、ふしぎなながめですね。これは、あひるのジマイマのおはなしです。ジマイマは、じぶんのたまごを、じぶんであたためたいのに、農場の奥さんが、めんどりにあずけてしまうので、ぷんぷんでした。

ぎりのお姉さんの、レベッカさんは言いました。「わたしは、28日もじっと巣にすわってるなんて、まっぴらよ。あなたもむりよ、ジマイマ。たまごを、冷やしちゃうにきまってるわ」。「わたしは、じぶんのたまごを、じぶんでかえしたいの!」と、ジマイマ。

ジマイマは、たまごを、かくしてみました。でも、いつも見つかって、はこばれてしまいます。ジマイマは、思いつめました。「農場から、はなれたところに、巣をつくろう」

よく晴れた、春の日の午後。ジマイマは、丘をこえる馬車道を、出発しました。ショールをはおって、ぼんぼりぼうしを、かぶって。

丘のてっぺんにつくと、とおくに森が見えました。「あそこなら、しずかで、あんぜんそう」

ジマイマは、とぶのは、あまりとくいではありません。坂を少しかけおりて、ショールをぱたぱたさせて——えいっと、空にとびあがりました。

いちど勢いがつくと、ジマイマは、じょうずにとべました。木のてっぺんの上を、すいーっ。森のまんなかに、ひらけた場所を見つけて、おりていきました。

ジマイマは、どしんとおりて、よちよち。かわいた、巣の場所をさがします。ジギタリスの花のあいだの、切りかぶが、よさそうに見えました。ところが——切りかぶの上には、りっぱな服を着た紳士が、新聞を読んで、すわっていたのです。ぴんと立った黒い耳に、すないろのひげ。「クワッ?」と、ジマイマは、首をかしげました。「クワッ?」

紳士は、新聞から目をあげて、ジマイマを、じろり。「マダム、道にまよわれましたかな?」。ふさふさの長いしっぽの上に、すわっています。ジマイマは思いました。「なんて、ていねいで、すてきなかたかしら」。そして、「まよったのではなくて、たまごをあたためる場所を、さがしているんです」と、話しました。

「ほう!それは、それは!」と、すなひげの紳士。新聞をたたんで、ポケットにしまいました。ジマイマが、めんどりのぐちをこぼすと、紳士は言いました。「なんと!わたしが、そのとりに会ってみたいものですな。よけいなお世話は、やめなさいと、おしえてさしあげるのに」

「巣のことなら、ごしんぱいなく。わたしの小屋に、羽毛が、ひとふくろありますからな。だれのじゃまにも、なりませんぞ。すきなだけ、おすわりなさい」。紳士は、ジギタリスの花のおくの、うすぐらい家に、案内しました。しばと、木のえだでできた、へんてこな家です。

「ここは、わたしの、夏の家でしてな」と、紳士。家のうらには、古い石けん箱でできた、ぼろぼろの小屋がありました。紳士は戸をあけて、ジマイマを、中に入れました。

小屋の中は、羽毛でいっぱい。むっとするほどです。でも、ふかふかで、とてもきもちよさそう。ジマイマは、「ずいぶん、たくさんの羽毛ねえ」と、びっくりしました。それでも、あっというまに、すてきな巣ができました。

ジマイマが外に出ると、紳士は、丸太にすわって、新聞を読んでいました。いえ、ひろげてはいましたが、目は、新聞のむこうを見ていました。紳士は、とてもしんせつに、やくそくしました。「あすまた来るまで、巣は、わたしが見ていてさしあげよう。わたしは、たまごとひなが、大すきでしてな」

ジマイマは、まいにち午後にやってきて、たまごを9つ、うみました。みどりがかった白い、大きなたまごです。きつね色の紳士は、ジマイマのいないあいだに、たまごをひっくりかえしては、数えていました。とうとう、ジマイマは言いました。「あしたから、たまごをあたためはじめます。とうもろこしのふくろを、持ってくるわ。たまごが、かぜをひくといけないから、巣からはなれないの」

「マダム、ふくろなど、いりませんぞ。麦は、わたしがごちそうしましょう。ただ、そのまえに——おいわいに、ふたりだけの晩さん会を、しませんかな。農場の畑から、ハーブをつんできてくだされ。おいしいオムレツを、つくりましょう。セージと、タイムと、ミントと、玉ねぎ2つと、パセリですぞ」

ジマイマは、うたがうことを知らない、あひるでした。セージと玉ねぎと聞いても、ぴんときません。それはぜんぶ、あひる料理につかうハーブなのに!ジマイマは、農場の庭をまわって、ハーブを、ちょんちょん、つみました。

それから、台所によちよち入って、かごから玉ねぎを2つ、とりました。出てきたところで、牧羊犬のケップに、会いました。「その玉ねぎ、どうするんだい?まいにち午後、ひとりでどこへ行ってるんだい、ジマイマ?」。ジマイマは、ケップをちょっとこわいと思っていたので、ぜんぶ話しました。かしこいケップは、首をかしげて聞いていましたが、すなひげの紳士のところで、にやりとしました。

ケップは、森のことや、家と小屋の場所を、いくつもたずねました。それから、村へかけていきました。2ひきの子犬を、さがしにいったのです。

よく晴れた午後。ジマイマは、さいごの荷物を持って、馬車道をのぼりました。ハーブのたばと、玉ねぎ2つ。ちょっと、おもたいです。森の上をとんで、紳士の家の前に、おりました。

紳士は、丸太にすわって、そわそわ。においをかいだり、森を、きょろきょろ見まわしたり。ジマイマがおりると、とびあがりました。「たまごを見たら、すぐ家に入りなさい。ハーブを、よこしなさい。いそいで!」。こんならんぼうな言いかた、はじめてです。ジマイマは、びっくりして、なんだか、こわくなりました。

小屋の中にいると、うらのほうから、足音がきこえました。黒いはなが、戸のすきまを、くんくん。それから——がちゃり。戸に、かぎがかかりました。ジマイマは、とてもこわくなりました。

そのすぐあと、外から、ものすごい音がきこえました。ワンワン!ウーッ!キャンキャン!そして——あのすなひげの紳士は、それっきり、二度と、すがたを見せませんでした。しばらくして、ケップが小屋の戸をあけて、ジマイマを出してくれました。

ところが、ざんねん。子犬たちが小屋にとびこんで、たまごを、ぜんぶ食べてしまったのです。ケップが「だめだ!」と言うまも、ありませんでした。

ジマイマは、たまごのことがかなしくて、なきながら、おうちにおくってもらいました。

6月になって、ジマイマはまた、たまごをうみました。こんどは、じぶんで、あたためさせてもらえました。でも、かえったのは、4わだけ。ジマイマは、「きんちょうしたからよ」と言いました。ほんとうは、むかしから、たまごをあたためるのが、へたっぴだったのです。おしまい。

出典と権利について
- 原作・絵: ビアトリクス・ポター『The Tale of Jemima Puddle-Duck』(1908年、イギリス)。作者は1943年に亡くなっており、文章・絵ともに著作権の保護期間が満了したパブリックドメイン作品です
- 原文と挿絵の出典: Project Gutenberg #14814
- 日本語訳: 当サイトによる新訳です(市販の翻訳書とは別の訳文で、読み聞かせ向けに短い文にしています。怖い場面の表現は、低年齢向けに少しやわらげています)
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読み聞かせに使うときのヒント
- きつねの「紳士」が出てくる、少しはらはらする展開です。お子さんの反応を見て、怖がるようなら昼間に聞くか、別のおはなしから始めてください
- 「クワッ?」「よちよち」など、まねしやすい音が多いおはなしです
- 発達への効果をうたうものではありません。お子さんが楽しんでいるかを基準に、合わなければ紙の絵本や他の遊びに切り替えてください
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